仙台国際音楽コンクール

Column&Review

第29回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

出場者プロフィールの“読み方”教えます

クラシックソムリエ 高坂 はる香

 いよいよ5月21日に開幕する仙台国際音楽コンクール。2月中旬にはすでに予備審査の結果が発表され、現在のところ(4月30日現在)、ヴァイオリン部門36名、ピアノ部門38名の出場者の名前と写真がホームページで公開されています。

 なかには、過去の仙台国際音楽コンクールに参加しているおなじみの顔もチラホラ。その他、もう演奏活動をしている出場者もいるので、すでに彼らのファンで応援しているという方もいらっしゃることでしょう。

 それでも、その大半は初めて出会う演奏家。そんな中で、コンクール鑑賞の期待感を充分膨らませるための、出場者プロフィールの“読み方”をご紹介します。

 

◇プログラム冊子、どこに注目する?

 

 コンクールが開幕すると、会場では、演奏曲目とともにプロフィールが掲載された公式プログラムも販売されます。ここにはホームページですでに公開されている出場者の生年や国籍に加え、出身校や師事歴などの情報も掲載されます。

 

 これを開いてまず気になるのが、過去のコンクール入賞歴(ひとり2つまで掲載)。大きな国際コンクールの上位入賞者には、やはり期待してしまいます。また、これがいつの実績なのかというのも興味深いところ。近々のコンクールで軒並み上位入賞を果たしているような出場者には、勢いを感じます。

 

 続いて着目するのは、師事している先生。優秀な演奏家を多く育てている名教師の生徒だったり、逆に弟子をとらないことで有名な演奏家の生徒だったりすると、実力に期待します。自分が好きなヴァイオリニストまたはピアニストと同門の出場者をチェックしてもおもしろいでしょう。

 とくにアジア系(とりわけ中国)の演奏家の場合は、国内、海外での師事歴が、過去に大スターを生んでいるのと同じパターンだったりすると、ちょっと気になります。伝統を継承する指導者がわんさか存在するヨーロッパ系諸国とは少し違い、才能のある子は人づてで著名な先生のもとに集まり、先輩と同じ道をたどるという現象が起きやすいのかもしれません。

 ちなみにこれまでにもご紹介しているとおり、仙台国際音楽コンクールの審査委員には名教師がたくさんいるので、彼らの生徒が出場していることもしばしば。しかし規定により、審査委員は過去2年間に指導した出場者の審査はできません。

 

 そしてやはり、学んでいる学校も要チェック。“学歴で人を判断する”みたいで少しイヤな感じ(?)かもしれませんが、音楽の世界においては、とくに長い伝統のある学校の場合、その学校が継承するカルチャーを引き継いだ演奏家なのだろうという推測ができます。とはいえ、もちろん同じ学校や同じ先生のもと学ぶ人でも、個性はさまざま。その違いを聴き比べるのも興味深いでしょう。

 

◇結局プロフィールではわからない!

 

 さて、ここまで出場者プロフィールの“読み方”についてあれこれ書いてきましたが、最後にまったく逆のことを申し上げます。

 魅力のある演奏家かどうかを、プロフィールだけで判断することはできません! 

 かつてとあるコンクールでこんな事例がありました。ある10代のピアニストが予備選の書類審査(音源なし)で落とされてしまいましたが、その後、世界数都市で行われた実演による予備選オーディションで復活合格。結果的にはそのコンクールで最高位に輝き、その数年後には世界的に有名なコンクールで優勝したのです。

 

 とくに若い演奏家の場合、これまでの経歴などなくて当然ですし、逆に年齢を重ねてある日突然花開く演奏家もいます。もっといえば、聴く人自身が自分の感性で良いと思えば、他の誰が何と言おうと、その演奏家は自分にとってすばらしい演奏家です。

 コンクールが始まったら、公式プログラムを眺めて期待を膨らませつつ、ご自分の耳と感性を頼りに純粋な気持ちで演奏を聴き、気に入った出場者を応援してください。