仙台国際音楽コンクール

Column&Review

第17回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

コンクール出場者を支える(1)共演する指揮者とオーケストラ

クラシックソムリエ 片桐 卓也

◇なぜファイナルには協奏曲が演奏されるのか?

 国際的なコンクールはほとんどの場合、第1次予選〜第2次予選〜セミファイナル〜ファイナルという流れで行われる。そしてファイナルでは協奏曲が課題曲となっている。

 なぜファイナルに協奏曲が置かれるのか? その理由はいくつもあるだろうが、大事な点としては、コンクールに参加した若きヴァイオリニスト、ピアニストたちが協奏曲の演奏の中で、指揮者とオーケストラとどんなコミュニケーションを取ることができるか、という点をチェックしたいからだと思う。

 ひとりで演奏する時には、聴衆とのコミュニケーションが必要だが、協奏曲の場合は実際に舞台の上に一緒に居る他の音楽家たちとのコミュニケーションが必要となる。そしてその能力はプロフェッショナルとして演奏活動を続けて行く上で、とても大事なものとなる。そういう意味で、コンクールのファイナルに協奏曲が置かれているのは、若い演奏家が本当にプロフェッショナルな演奏家として活動できるかどうかを判断するため、と言える。

 そう考えると、ファイナルで協奏曲を共演する指揮者、オーケストラの役割はとても大きいことになる。

 基本的に若い演奏家たちは協奏曲を演奏する機会が少ない。コンクールで初めてオーケストラと共演するという演奏家もいるだろう。その経験の少なさが、演奏そのものに影響することも多い。自分の力を十分に発揮することが出来ないもどかしさもあるだろう。

 そこで重要になるのが、指揮者とオーケストラの協力である。若い演奏家たちが協奏曲で考えている音楽の解釈、表現したいことを理解し、それを実現する。それは簡単なことではない。

 実際のコンクールのことを考えると、まずファイナルの前のリハーサル時間は限られている。そして、同じ協奏曲が課題曲となることもあるけれど、まったく違う作品の場合も多い。その準備をするのもかなり大変なことである。その短いリハーサルの間に、どこまでお互いのコミュニケーションが取れるか、それがファイナルの成否を決めると言っても過言ではない。

◇オーケストラが求められること……多くの課題曲の準備も大変!

 さて、第6回を迎える仙台国際音楽コンクールは、これまでの5回とはちょっと違い、ファイナルで2曲の協奏曲を演奏することになった。

 ヴァイオリン部門はメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲と指定された4曲の中から1曲、ピアノ部門ではモーツァルトの指定されたピアノ協奏曲から1曲、そして有名曲が並ぶ16曲の中から1曲を選ぶ。

 これはコンクール出場者にとっては選択肢が広がって良いことだと思うけれど、共演するオーケストラにとってはとても大変なことだ。特にピアノ部門の場合は課題曲の数が多いので、この多彩な曲のリストの中からどの曲が選ばれるか、セミファイナルが終わり、ファイナリストが決まる時点まで分からないから。その準備をされるオーケストラには本当に頭が下がる想いだ。

 また、仙台国際音楽コンクールの場合、予選、セミファイナルでも協奏曲の課題曲がある。当然ながら、そこでもオーケストラが活躍する。それも協奏曲を主体とする仙台国際音楽コンクールらしさ。そしてそれに応える仙台フィルハーモニー管弦楽団の意欲も高く評価されるべきである(ヴァイオリン部門の予選には山形交響楽団も参加する)。

 世界的に見ても、国際的なコンクールでは開催地の地元のオーケストラがファイナルの協奏曲の演奏をサポートしている。それは地元の聴衆にとっても誇りを感じる点なのだそうだ。第6回では仙台フィルのさらなる奮闘に期待しよう