仙台国際音楽コンクール

Column&Review

第14回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

世界の中の仙台国際音楽コンクール(1)仙台国際音楽コンクールが注目されるわけ

クラシックソムリエ 高坂 はる香

◇若手にとって貴重な、コンチェルトの演奏機会

 

 数多くの音楽コンクールが存在する中、世界から注目を集めるコンクールには、それぞれに特徴があります。大作曲家や名演奏家の名を冠して行われる伝統、優勝後の演奏活動の多さ、高額の賞金や充実した副賞、そして、それに伴って実現する参加者のレベルの高さ……。

 そんな中、欧米の歴史あるコンクールに比べればまだ若い仙台国際音楽コンクールが、すでにこれだけ世界からの注目を集めているのには、どんな理由があるのでしょうか。

 第1回仙台国際音楽コンクールが開催されたのは、2001年。その6年前、1995年に、仙台で初めて大きな国際的音楽コンクールが開催されました。世界三大コンクールのひとつチャイコフスキー国際コンクールのジュニア部門である、「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」です。

 このコンクールは毎回開催都市を変えて実施され、仙台で行われた第2回では、ピアノ部門で今や大スターピアニストとして活躍するラン・ランさんが第1位、のちに本家のチャイコフスキーコンクールで優勝する上原彩子さんが第2位に入賞。当時の演奏を聴いた方にとって、それはきっと自慢の思い出となっていることでしょう。

 そしてヴァイオリン部門の第2位には、松山冴花さんが入賞しています。彼女はその9年後、第2回仙台国際音楽コンクールで優勝に輝きました。

 松山さんは仙台国際音楽コンクールに参加した理由について、「全部のステージで演奏できれば、コンチェルトを4曲も演奏できるのだから、参加しなくては損だと思ってすぐに申し込んだ」と語っています。

 これこそが、このコンクールが世界の注目を集める第一の理由。若い演奏家にとって、コンチェルトの演奏やプロのオーケストラとの共演機会は貴重です。また、名指揮者のタクトで仙台フィルと早いステージから演奏できることも、大きな魅力でしょう。課題曲をコンチェルト中心としたコンクールは世界でも珍しく、初回から多くの優秀な若手が仙台に集まり、コンクールのレベルアップが実現したのです。

 

◇コンクールの評判も口コミで広がる!?

 

 2010年第4回のピアノ部門で優勝したヴァディム・ホロデンコさんは、その前の第3回ヴァイオリン部門で優勝したアリョーナ・バーエワさんの副賞コンサートで伴奏者を務めたことが、仙台との初めての関わりでした。そして彼女からコンクールの充実ぶりを聞き、自らも出場することを決めたといいます。

 この、コンクールの充実とサポートのすばらしさが口コミで広がっているというのも、仙台国際音楽コンクールが優秀な若手を集める理由。過去の参加者から勧められて出場を決めたという話、また、以前参加したときに快適な時間が過ごせたから再挑戦したという話は、よく耳にします。どんな分野でも、口コミの情報拡散パワーはあなどれません!

 そしてもう一つ見逃せないのが、入賞者のその後の活躍ぶり。ご存知のとおり、ホロデンコさんはその後2013年、難関として知られるアメリカのヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝し、現在全米を中心に多忙な演奏活動を行っています。14歳で第1回ピアノ部門に入賞したユジャ・ワンさんは、今や世界の超名門オーケストラのソリストをつとめる大スター。その他にも、ヴァイオリン部門のスヴェトリン・ルセフさんやクララ・ジュミ・カンさんなど、のちに目覚ましい演奏活動を続ける演奏家が多く入賞しています。まさに、未来のスターが発掘される場。

 協奏曲中心という独自のコンセプトを打ち出した課題曲、そこに魅力を感じて集まった優秀な若手を、市民やスタッフが一丸となってあたたかくもてなし、厳正な審査によって真に実力のある演奏家が選ばれる。こうしたさまざまな要素が手伝って、仙台国際音楽コンクールは早いうちから世界に注目される存在となったといえるでしょう。