仙台国際音楽コンクール

Column&Review

第12回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

コンクールを聴くことのおもしろさはどこにある?(2)勝敗だけが重要じゃない!

クラシックソムリエ 高坂 はる香

◇インターネット配信がコンクールの役割を変えた

 

 前回は、かつて国際音楽コンクールというものが、国や政治とかかわりのある、もはや“国家事業”と言えるような重要な存在であったことについて紹介しました。

 一方、時代が移り、国際音楽コンクールの数も増えたことで、その意義や役割も大きく変化しました。特にここ10年ほどは、演奏がインターネット配信されるようになったことで、コンクールの存在意義も変化したと言えるでしょう。

 優勝者がその演奏を瞬時に世界の人々に聴いてもらうことができるのはもちろん、審査結果が振るわなかった出場者にとっても、初期のステージから演奏が配信されることで、世界にファンを持つことができる貴重な場となりました。コンクールによって世界への扉が開かれる機会は、上位入賞者だけのものではなくなったのです。

 それは同時に聴衆にとっても、コンクールが、まだ世界で評価を受ける前の、自分だけのお気に入りに出会うことができる場となったことを意味しています。

 これはもちろん、インターネット配信に限ったことではありません。例えば仙台国際音楽コンクールでも、予選からファイナルまですべての審査は公開で行われます。ホールに足を運べば、世界中から集まった俊英たちの演奏を生で楽しむことができます。

 また、コンクール事務局が発信するお知らせをこまめにチェックすれば、出場者の素顔や音楽性が垣間見られる情報を得ることができるでしょう。仙台国際音楽コンクールでは、ボランティアスタッフが独自の視点で発信する情報がとても充実しているので、こちらも要チェックです。

 

◇結果にかかわらずさまざまなチャンスが!

 

 出場者たちは綿密な準備を重ね、もちろん頂点を目指してコンクールに臨むわけですが、参加するだけでも大きな意義があったという声が聞かれることもあります。膨大な課題曲を本番までに仕上げる力、プレッシャーに打ち勝つ精神などといった、プロとしてやっていくための能力、世界からやってきた出場者との交流など、その“収穫”はさまざま。

 特に仙台国際音楽コンクールについては協奏曲が課題曲の中心となっていることから、若い演奏家にとって普段なかなかない、協奏曲のステージを経験できる貴重なチャンスとなっているようです。

 また、仙台国際音楽コンクールでは、希望者にあらかじめホストファミリーが用意されているというのもユニークです。次のラウンドに進めなかった出場者も、コンクール期間中ホームステイで仙台に滞在することができます。その滞在中には、コンクール事務局がアレンジした市内での無料コンサートや学校訪問コンサート、また、市民が主催するコンサートなど、地域が支えるコンクールならではの演奏機会が用意されます。結果にかかわらず、仙台国際音楽コンクールは良い思い出だったという出場者が多く、また何度も挑戦する人もいるのは、このためもあるでしょう。

 もちろん、優勝者にはコンサート出演や録音など、その後のキャリアの助けになる多くの機会が与えられますから、良い結果がとても重要であることは確かです。

 それでも、コンクールにおいて結果だけが重要視され、優勝者のみがメディアでもてはやされるという時代は終わったといえます。全ての出場者にとって幅広いチャンスが用意され、同時に、音楽ファンにとってもさまざまな楽しみ方がある。インターネット技術の進歩と運営の工夫により、コンクールはそんな機会へと変貌を遂げたのです。