仙台国際音楽コンクール

Column&Review

第10回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

クラシックを気持ちよく堪能するための演奏会マナーあれこれ

クラシックソムリエ 高坂 はる香

◇音に関するマナー

 ポップスやロックなどのコンサートと違い、静かな空間で耳を澄まし、細かな音の違いや響きの余韻を楽しむことも、クラシック音楽会の醍醐味の一つ。ホールでこうした繊細な音楽に気持ちよく没頭できる空間を実現するためには、聴衆一人一人の気遣いが大切になります。今回はそんな、演奏会で気をつけたいマナーをご紹介します。

 まず、最も注意したいのが、携帯電話。仙台国際音楽コンクールの会場でも、演奏中は電源をオフにするよう注意を呼び掛けています。演奏中に万が一着信音が鳴れば、周りの聴衆の迷惑になるだけでなく、緊張の中でステージに立つ演奏家の集中を妨げてしまうことにもなります。

 静かなホールでは、マナーモードの震動音でもよく響きます。また、アラームをセットしてうっかり忘れていたなどということもありえるので、やはり携帯電話は「マナーモードに設定のうえ、電源を切る」のがマナー。時計のアラーム音にも注意しましょう。

 もうひとつ注意したいのが、予想以上に響いてしまうさまざまな音。

 例えば、やむをえずせきやくしゃみが出てしまうこともあるでしょう。心配なときは、あらかじめ手元に厚手のハンカチやタオルを用意しておくのがおすすめ。これで口をしっかりと塞ぐと、かなり音が軽減されます。演奏の音量が大きな瞬間に紛れさせるなどして、なんとかのりきりましょう。

 また、多くのホールは飲食禁止ですが、咳を予防するためののど飴などは許容範囲。ただ、この飴の包みをはがす音が、ホールでは思いのほかよく響きます。音をたてないように、少しずつそっと……という気遣いが裏目に出て、延々とかすかな“パリパリ音”が響きわたることも。音の出ない包装のものを選ぶ、休憩中に包みから外してハンカチに包んでおくなど、工夫しましょう。

 プログラムをめくる音、荷物の入ったビニール袋の音なども、思っている以上に耳につきます。キーホルダーなどに付いている鈴の音にも要注意です。

◇演奏への賛辞を伝える上でのマナー

 すばらしい演奏に対して贈りたい、大きな拍手やブラヴォーの声。

 一般的に、クラシックの演奏では一つの作品が終わってから拍手をするのがマナーです。複数楽章がある作品や組曲では、合間に拍手をしないのが普通。中間の楽章のフィニッシュが華やかでつい拍手をしたくなることもあるかもしれませんが、ぐっと我慢しましょう。

 難しいのは、演奏家が自らの意志で、いくつかの作品を続けて演奏する場合。集中を保つためとか、続けて演奏することで伝えたいことがあるとか、その理由はさまざまです。逆に一つの作品集の途中でも、一息つこうと袖に下がる人もいます。演奏家の意図を大切にするなら、彼らが客席を向いてお辞儀をするタイミングまで待ってから拍手をすることにしておくのが無難でしょう。

 もう一つ、最近しばしば話題になるのが、拍手やブラヴォーの“フライング”。音の余韻を会場中が楽しんでいるときに、静寂を破って我先に拍手を始めるのは、かなりのひんしゅくをかうので要注意。ピアニストやヴァイオリニストが演奏していた手を下ろす、指揮者が指揮棒を下ろすなどの瞬間まで、どんなに賛辞を贈りたくてもぐっとこらえるのがマナーです。

 今回は、演奏会でのマナーをご紹介しましたが、場違いなことをしてしまったらどうしよう……と臆することはありません。ホールに通ううち、自然と会場の雰囲気になじんで、すべきこととすべきでないことがわかるようになるでしょう。

 すばらしい演奏会は、聴衆も一緒につくるもの。客席の雰囲気に反応して、生まれる音楽も変わってきます。そうして、その瞬間にしか存在しない音楽をホールにいる人々で共有することは、かけがえのない体験です。