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キム・ボムソリさんインタビュー  2014/10/4

第5回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門第5位
キム・ボムソリさん インタビュー

インタビュアー・文:高坂 はる香(音楽ライター)

2010年第4回仙台国際音楽コンクールのヴァイオリン部門で最年少入賞、聴衆賞を受賞。続く2013年の第5回コンクールでも入賞、聴衆賞を受賞し、仙台の聴衆から人気を集めているキム・ボムソリさん。ヨーロッパでも2013年ARDミュンヘン国際音楽コンクールで最高賞に輝くなど、国際的なキャリアを重ねている。今年からニューヨークのジュリアード音楽院に留学することになり、新生活が始まったばかりだという彼女。仙台クラシックフェスティバルのため来日した際に、お話を伺った。

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―――今回のせんくらでは、デュオ、ピアノトリオ、そしてカルテットというさまざまなスタイルで演奏を披露してくださいました。とくにカルテットは、他のお3方がすべてコンクールでも共演した仙台フィルのメンバーでしたね。

「はい、個人的に彼らを知ってはいましたが、室内楽でご一緒するのは初めてでした。みなさんすごく優しくしてくださって、リハーサルから本番までとても楽しんで演奏することができました。今ちょうどジュリアードでカルテットを結成して、これから勉強していこうというところなので、実はお客様の前でカルテットの演奏をするのは今回が初めてだったんです。これまでにも、ピアノトリオは演奏する機会がありました。例えば、昨年ピアノ部門で優勝したソヌ・イエゴンさんとは中学生のときピアノトリオを演奏したことがあります。彼とは中学の同級生で、仲の良い友達なんです。」

―――第4回、第5回と2度仙台コンクールに参加されたのはなぜでしょうか?

「同じコンクールに2回挑戦するのは難しいことなので、参加を決めるにあたってはよく考えました。仙台コンクールはとてもすばらしい運営のもとで行われていて、余計な心配をすることなく音楽に集中できますから、やはり挑戦してみたいと思いました。たとえばアンドレイ・バラーノフさんも第3回、第4回と続けて出場していますよね。出場者にとってコンクールの運営がすばらしいということの表れだと思います。」

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―――仙台コンクールが他のコンクールと違うのはどんなところだと思いますか?

「一番大きな違いは、やはり予選からファイナルまで協奏曲が課題になっているという点です。短い期間でたくさんの作品をオーケストラと共演することで、オーケストラとのバランスのとり方などを勉強することができます。音楽家としての能力を高めるすばらしい機会になったと思います。
もう一つの違いは、コンクールの自分の演奏が全て終わったあとにホストファミリーのお宅に滞在できるということ。コンクール中からホストファミリーの家に滞在するコンクールはたくさんありますが、ここ仙台では、演奏がある間は音楽に集中することができ、次に進めなくなったところからホストファミリーの家にお世話になって、日本の文化を知ることができます。とても良いシステムです。
それにしても、仙台のみなさんは本当にクラシック音楽がお好きなのですね。朝から夜まで多くの人がコンクールを聴きに会場にいらしているのを見て、とても驚きました。言ってみれば、クラシック音楽は日本の伝統音楽ではないにもかかわらずあれだけの人が熱心に聴きにいらしていることに、私はとても感銘を受けました。」

―――2度の仙台コンクールの思い出の中で一番印象に残っていることは何ですか?

「ひとつ選ぶのはとても難しいですが……2010年のセミファイナルですね。このときのセミファイナルでは、コンチェルトを2曲用意してどちらを弾くかくじ引きで決めることになっていました。私はシベリウスとストラヴィンスキーを用意していました。どちらも難しい作品ですが、仙台フィルはすばらしいオーケストラだと聞いてぜひストラヴィンスキーを共演したいと思っていたところ、見事に引き当てることができて本当に幸せでした。指揮者のパスカル・ヴェロさんは作品のことをとてもよくご存知で、仙台フィルもすばらしく、本番の演奏では自分でもとても感動してしまいました。」

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―――ご自身にとって、コンクールを受けるという経験とはどのようなものなのでしょうか?

「音楽家にとって、コンクールはとても重要な場です。普通は海外で演奏するチャンスがなかなかなく、世界の聴衆に自分の演奏を聴いてもらうことはできません。コンクールは、多くの人に自分の演奏を聴いてもらう良い機会だと思います。また、音楽に集中し、短い期間で多くの曲を練習することは、自分を成長させる意味でも大切なことです。演奏家はたくさんのコンサートでさまざまなレパートリーを演奏する必要がありますから、コンクールの経験はいわば、プロになるための準備期間だと思います。」

―――今回が4度目の仙台への訪問ということですが、日本の他の都市に行かれたことはありますか?

「それが、ほとんどないんです。なぜでしょうね……。仙台が気に入っているからでしょうか。牛タンは美味しいし(笑)。
そういえば、一度だけ東京に行ったことがあります。ソウル国立大学では囲碁クラブに入っていたのですが、東京大学との交流プログラムで東京を訪れたのです。2009年のことですから、それが初めての日本でしたね。囲碁は、8歳ごろに始めて以来の私の趣味です。」

―――震災後の2011年7月、学校訪問コンサートと宮城教育大学交響楽団とのコンサート出演のため仙台にいらしています。そのときのご感想をお聞かせください。

「被災の跡が残る街の様子を見てとても悲しく感じました。仙台空港も、コンクール中に滞在していたホテルも被災していました。演奏することで少しでもみなさんを元気づけられたらという気持ちで仙台を訪れましたが、実際には、私のほうが仙台のみなさんに勇気づけられたように思います。お花までプレゼントしていただき、とても温かく迎えてくださったことが強く記憶に残っています。」

―――最近のご活動についてお伺いします。今年からジュリアード音楽院での留学が始まるということですが、ニューヨークでの生活はいかがですか?

「この夏に引っ越したばかりです。一人暮らしは初めてですし、それが海外ということで、とても楽しみにしていると同時に緊張もしていました。自分で住む場所を探し、家具を揃えなくてはないなど、やることが山のようにありました。幸いにもニューヨークには友達がいて助けてくれたので、今はとても快適に暮らしています。母語でない英語でおこなわれる授業についていくのは、少し大変ですが。
ジュリアード音楽院はリンカンセンターと同じ建物の中にあり、環境もすばらしいです。学校の近くに住んでいますから、まるで芸術の中心地に住んでいるよう。コンサートや美術館にも行きたい時に行くことができます。
今師事しているのは、シルヴィア・ローゼンベルク先生。とても情熱的な音楽家で、レッスンはとても刺激的です。」

―――ボムソリさんが演奏をするうえで一番大事にしていることはなんでしょうか?

「作曲家そのものに集中し、よく考えることだと思います。作曲家の経歴を知ること自体が重要だとは思いませんが、様式感を理解することはとても大切です。演奏家は音楽に対して真摯であるべきで、派手なことをしようとせず、自然に演奏することが大切だと私は思います。」

―――留学先をニューヨークに決めたのはなぜですか?

「コンクールを受けた経験から、ヨーロッパには知り合いも多くいます。ベルリンフィルハーモニーホールやウィーンのムジークフェラインで演奏させてもらったこともありますし、私のことを知ってくれている方も多くいます。一方アメリカにはほとんどコンタクトがありません。確かにヨーロッパで勉強するほうが楽だったとは思いますが、アメリカという新しい場所で、私がどんな演奏家なのかを知ってもらいたいと思い、留学先をニューヨークに決めました。」

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―――これから仙台コンクールへ参加する方々にむけて、メッセージやアドバイスがあればお願いします。

「仙台コンクールは完璧なコンクールで、とにかく音楽に集中することができます。マイナスの要素はなにもありません。オーケストラとたくさん演奏でき、とても良い経験になります。仙台のたくさんのクラシック好きの方々の前で演奏することで、インスパイアされること、学ぶこともあると思います。私は、みなさんに参加されることをおすすめしたいと思いますね。」

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