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ジュゼッペ・アンダローロさんインタビュー  2015/10/4

第1回仙台国際音楽コンクールピアノ部門優勝
ジュゼッペ・アンダローロさん インタビュー

インタビュアー・文:道下 京子(音楽評論家)

 

2001年、第1回仙台国際音楽コンクールピアノ部門で優勝を飾ったジュゼッペ・アンダローロさん。仙台のこのコンクールを皮切りに、ロンドン国際ピアノコンクールやブゾーニ国際コンクールなどでも次々と優勝。ルネッサンス音楽からコンテンポラリー、さらにはロックなどジャンルにとらわれない活動を展開するアンダローロさんに、仙台でお話をうかがうことができた。

 

Giuseppe ANDALORO_2

 

―――第1回仙台国際音楽コンクールでの優勝から15年が経ちましたが、優勝後、演奏活動に変化はありましたか?

 

仙台のコンクールを受けることを決意した瞬間、優勝は私にとって大きな目標となりました。当時、私は19歳でしたので、その後に起こりうることをまったく想像できませんでした。優勝したことで、音楽と人生に対する概念が以前とはまったく変わったのです。このコンクールの優勝により、ピアノ・ソロのみならず仙台フィルなどのオーケストラや室内楽、それから西江辰郎さん(注:当時、仙台フィルのコンサートマスター)とのデュオなど、来日してさまざまに演奏するチャンスをいただいています。このコンクールでの優勝は、その後の活動範囲を広げただけではなく、新しい世界を発見するチャンスも与えてくれました。また、仙台のコンクールへの挑戦は、アジアへの扉も開けてくれました。当時、アジアについてはまったく知りませんでしたので、いろいろとショッキングな発見や経験もありました(笑)。そういう意味でも、意義深いコンクールでした。」

 

―――ショッキングな発見?

 

「すべてに驚きました。当時は、イタリアから海外へ旅行することにも慣れていませんでした。すべてが特別に思え、イタリアとの大きな違いにびっくりしました。例えば、食べ物や人々の話し方や接し方、それから道がとてもきれいですね。特に驚いたのは、物価の高さ!とても耐えられませんでした。いまは、ミラノの方が日本よりももっと高いですけれど。それから、お手洗いのエレクトリック・トイレ(ウォシュレット)にもびっくりしました。見たこともなければ、使い方もわからなくて…」

 

―――仙台のコンクールについては、いかがでしたか?

 

「運営がパーフェクトに組織化されていて、常にオン・タイム&オン・スケジュールで運営がよく整えられていると思いました。」

 

―――コンクールの期間中で、最も印象に残っているできごとを教えてください。

 

「私自身の演奏については、コンクールのすべてのラウンドにわたり鮮明に覚えています。予選の時は、とても緊張していましたね。最初に、大きな過ちも犯しました。予選の演奏直前のことですが、とても疲れていて、人から勧められた栄養ドリンクを買って飲んだのですが、心臓がドキドキしてしまい、どうしたらよいかわからなくなってしまったのです。その直後、ショパンのエチュードを演奏したのですが、とても速いテンポになってしまいました。これでは、きっと次の審査へ進めないだろうとガッカリしていましたが、予選は無事に通過できたのです。次のセミファイナルでは、ラヴェルの協奏曲を演奏しましたが、当日に発熱し、左耳が聴こえなくなってしまいました。左耳はオーケストラの音を聴く耳なので、最悪の状態だったのです。しかも、初めて演奏する曲でしたので、とても大変でしたが何とか弾き切りました。ファイナルでは、2曲選択したうちの片方を演奏することになっており、私はリストのピアノ協奏曲の1番と2番を選択していました。私は、それまでに2番を弾いたことがなく、1番を準備万端の状態で用意していたのですが、抽選(くじ引き)で2番を引き当ててしまったのです。ところが、弾いてみたらとてもうまくいき、優勝できました。
仙台で演奏したリストのピアノ協奏曲第2番は、私の運命を劇的に変えた曲です。仙台で優勝した1年後のロンドンのコンクールでも、4年後のブゾーニでもこの曲を演奏して、優勝したのですから。」

 

Giuseppe ANDALORO_1

 

―――さまざまなハプニングがあったのですね。課題曲についてお話されましたが、当時の課題曲については、いかがでしたか?

 

「来年開催される第6回コンクールの課題曲とはずいぶん違いますね。第1回の予選では、必ずモーツァルトを演奏しなければなりませんでした。エチュードについては、リスト、ショパン、ドビュッシー、ラフマニノフの4曲を選んだように記憶しています。この組み合わせについて、私はとても良いと思っています。予選のエチュードでは、演奏者の演奏技術や力量を比べるには、とてもいい曲がリストアップされていました。それを出場者は示さなければ次の段階へ進むことができません。一方、モーツァルトでは芸術性を非常に重視され、例えばフレージングやスタイル、それに対する理解、解釈、創造力などが要求されるような曲でした。ですから予選の課題曲は、技巧面とアーティスティックな面のバランスが非常によくとれていたのではないでしょうか。
第6回コンクールの課題曲については、さらに自由に選択できるようですね。さまざまな面での比較が必要になりますので、審査が大変になるのではと思います。演奏を比較することについて、審査委員の理解や解釈、テイスト、そして好みなどが大きく反映されるのではないかと思います。」

 

―――仙台国際音楽コンクールへの出場を考えている若いアーティストへ、アドヴァイスを!

 

「もちろん、練習が最も大切と言えます。それともうひとつ、自分が好きな曲でコンクールに挑んでほしいのです。学生の頃は、先生や学校の指導に従って音楽を勉強しますが、自分で自由に選択する必要性も感じています。予選の課題曲は、最初は先生に進められた曲を練習していたのですが、自分には合わないと判断して、別の曲を演奏しました。自分の好きな曲であれば、ベストな状態で演奏できると信じています。いまは、音楽界の移り変わりは非常に速く、若い方々にはできるだけ早く成長することが求められているように感じています。音楽の世界のなかで、自分に何が適うのか、また自分の好き作品を探し出してほしいですね。」

 

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―――ところで、アンダローロさんは、ジャンルにとらわれない活動をしておられます。

 

「最近は、アレンジなどもやっております。プログレッシヴ・ロックも好きで、それらをとり入れたコンサートも行っていますし、ジャズや即興演奏についてもずっと取り組んでいきたいと思っています。クラシック音楽は、いつも規則やルール、譜面に縛られて、それらに従っていかなければなりません。しかし、楽譜を超えた、つまり楽譜よりも深いものを自分の個性をもって追い続け、オープンマインドな音楽家でありたいのです。例えば、フリードリヒ・グルダはピアニストでありながら、即興演奏やジャズを演奏するなど、束縛されることなくさまざまな音楽性を求めており、素敵ですね。」

 

―――一方で、ルネッサンスの音楽にも取り組んでおられます。

 

「イタリアはルネッサンス発祥の地で、ガブリエーリやメールラ、フレスコバルディ、モンテヴェルディなど素晴らしい作曲家がいました。私は子どもの頃から、彼らの音楽がとても好きでした。2~3年前には「クルエル・ビューティ」のタイトルのCDがソニーからリリースされました。後期ルネッサンスとバロック初期の鍵盤楽器の曲だけを集めたCDで、そういう試みは世界でも例がないと思います。それらの音楽には即興も許されており、とても心惹かれる部分です。カギはやはり…想像力ですね!」

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