Sendai International Music Competition

スヴェトリン・ルセフさんインタビュー | 仙台国際音楽コンクール公式サイト

インタビュー

第1回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門優勝
スヴェトリン・ルセフさん インタビュー

インタビュアー・文:道下 京子(音楽評論家)

インタビュー日:2015年10月3日

ブルガリア生まれで、現在はパリを拠点に活動するスヴェトリン・ルセフさん。パリ国立高等音楽院の教授とフランス国立放送フィルのコンサートマスターを兼務する実力派ヴァイオリニストである。また、2007年から2015年までの期間、ソウル・フィルのコンサートマスターも務めた。2001年、第1回の仙台国際コンクールヴァイオリン部門で優勝。このコンクールの入賞者のなかでも、日本で演奏する機会が最も多いアーティストの一人であろう。10月には「仙台クラシックフェスティバル2015」出演のために来日。このインタビューは、その期間中に行なったものである。

第1回のコンクール優勝後、ご自身について、あるいは演奏活動について変化はありましたか?

「さまざまあります。まずは、演奏家としての自信がつきました。私たちは毎日練習していますが、コンクールで優勝することによって正しい方向へと進んでいることが証明されるからです。『そのまま進め』と、仙台のコンクールや仙台の人々が私の背中を後押ししてくださったのです。

コンクールで優勝することは、励みでもあり、音楽家にはとても重要なのです。音楽は、ものさしで測れるものではありません。『ここまで』という線もないし、スポーツ競技のようにタイムを競うものでもない、非常に主観的なものなのです。

また、コンクール後に日本で演奏する機会をいただきました。そのひとつの外山雄三氏指揮による東京でのコンサートは、日本での音楽活動への大きな足がかりとなる重要な公演となりました。

仙台のコンクールで優勝したことで、私は前回の仙台国際音楽コンクールの審査委員に加えていただいたのですが、それは私の音楽家としてのキャリアを育成する上で重要な役割を担う、本当に価値のある経験でした。

もちろん、ホールやプロフェッショナルなオーケストラと共演した素晴らしい想い出、心あたたかい聴衆、そしてこのコンクールを通して親しくなった人もいます。実は今日も、そのうちの何人かに会いました。あれからもう15年が過ぎましたが、私は仙台のみなさまを慕っています。かけがえのない経験でした!」

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コンクール後、コンサートや審査などで何度も仙台を訪れていますが、お気に入りの仙台を教えてください。

「まず、仙台で心地良いポイントは、街のサイズが小さすぎず、大きすぎず…人が住むにふさわしい環境であることです。移動も便利です。コンクールの期間中、宿泊先のホテルの近くを流れる広瀬川沿いをランニングしていたことを覚えています。その川沿いにはいくつかの公園があり、とにかく緑が多いことも嬉しいですね。美味しい飲食店もたくさんあります。交通の便も良く、飛行機や新幹線、市内には地下鉄もあり、さまざまな移動手段があります。そして、仙台フィルハーモニー管弦楽団もあります。ほかにも魅力的なものがたくさんあり、仙台のみなさんはとても幸せですね。」

コンクールに出場された時のことをお伺いしたいのですが、とくに印象に残っていることを教えてください。

「予選では、バッハの協奏曲を弦楽四重奏と演奏しました。弦楽四重奏の演奏が素晴らしく、私自身がリードする必要がなかったので、自分の演奏に十分に集中することができました。協奏曲にフォーカスした課題曲も素晴らしい構成でした。異なる作品のスタイルのなかで、自分がどのように振る舞い、共演者といかにコミュニケーションを取っていくかなど、さまざまな状況で演奏能力を審査されます。私の場合、1回だけの短いリハーサルでしたが、一度通しただけでうまくいきました。
予選を通過したあとは、ショスタコーヴィチの《ヴァイオリン協奏曲 第1番》を弾くことになっていたのですが、その曲はほぼコンクール期間中に勉強したと言っても良いくらい、まさにコンクール直前に勉強した曲でした。他のコンテスタントの演奏をあまり聴くことはできませんでしたが、技術的にも音楽的にも非常に高いレベルであったことに感銘を受けました。時間通り運営されており、問題点はありませんでした。」

第5回のコンクールでは、審査委員も務められました。

「その時も、出場者の演奏条件や滞在中の環境、運営面はトップレベルでしたね。そして、彼らが繰り広げる非常に高いレベルの演奏!審査委員として多くの若い演奏家を発掘してきた高名な先生方ともお話することができました。コンクール(ヴァイオリン部門)は、ほぼ2週間にも及び、エクスカーションやコンサート、マスタークラスもありました。
次の世代の人たち、若い演奏家とコンタクトを持てたことにも嬉しく思います。」

教えると言えば、ルセフさんは、第5回コンクールで2位だった成田達輝さんの先生ですね。彼の成長をどのように思われますか?

「彼は著しく成長したと思います。(コンセルヴァトワールの)入試に通った頃はまだ若かったですが、その後の成長には目を見張るものがありました。様々な場面で共演もしています。彼の成長をいつも嬉しく思っています。若い頃から、レパートリーと技術、そしてとても繊細な面を持ち合わせていました。」

来年(2016年)には、6回目の仙台国際音楽コンクールが行なわれます。出場される方にアドバイスはありますか?

「仙台に限ったことではありませんが、コンクールを受ける際には、まず準備をしっかりすること。そして、コンクールへの挑戦を楽しむことです。また、仙台は運営がよく、出場者がストレスを感じること無く演奏できます。出場者がリラックスした状態で演奏するためには事務局の優れた運営が重要です。仙台のコンクールについては、あらかじめスケジュールも把握できるなど、完璧です。そうは言っても、コンクールの準備期間はストレスも溜まりますし、疑心暗鬼になったりもします。そのためにも毎日練習をして、「よくやれた」という実感を得るべきです。よい演奏ができただけでは十分ではありません。常に前へ前へと進み、闘ってください。」

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現在、ルセフさんはパリのコンセルヴァトワールで後進のご指導にあたられていますが、フランス国立放送フィルのコンサートマスターと、ソウル・フィルの首席客演コンサートマスターを務めておられます。演奏会も多いですね。

「数は多いのですけれど、バランスよく演奏活動を行なっています。室内楽、ソロ、オーケストラとのそれぞれの演奏回数はほぼ同じです。このバランスはとても重要です。オーケストラでチョン・ミョンフン(前フランス国立放送フィルの指揮者)らの素晴らしい指揮者に毎日のように会い、レパートリーやオーケストラの音色や響きなどの知識を深めることができます。また、ソリストとしての活動は、自分を豊かにしてくれます。」

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