Sendai International Music Competition

青木尚佳さんインタビュー | 仙台国際音楽コンクール公式サイト

インタビュー

第6回仙台国際音楽コンクールヴァイオリン部門第3位
青木尚佳さん インタビュー

インタビュアー・文:松本 學(音楽評論家)

インタビュー日:2018年1月20日

前回2016年第6回仙台国際コンクールヴァイオリン部門で第3位に輝いた青木尚佳さん。どの作品を弾いても素晴らしく高いレヴェルの仕上がりだったが、今年2018年1月に高関健指揮の仙台フィルとハチャトゥリャンのヴァイオリン協奏曲を共演した際には、コンクール時よりもなお一層進化した切れ味のよい演奏を聴かせ、将来の大成を確信させてくれた。

2日にわたるコンチェルト、お疲れさまでした。コンクール後に仙台に演奏でいらっしゃったのは、昨年10月の「仙台クラシックフェスティバル(せんくら)」に続いて今回が2度目ですよね。

そうです。コンクール以降、仙台でコンチェルトを弾いたのは、今回が初めてになります。

コンクールの時と比べてホールやオーケストラの印象はいかがですか?

まず、楽屋が予選の控室と同じ部屋だったんですよ。それでもうあの時のことをすべて思い出しました。オーケストラの皆さんは、コンクールの時からとても優しく接してくださいましたし、すっかり安心して弾かせていただいきました。またホルンの溝根さんは、私が所属していた東京ジュニアオーケストラソサエティの先輩で、昨夜は団員の方に食事に連れて行ってもらいました。アンコール(クライスラー)でもオーケストラに一緒に弾いていただくなど、わがままも聞いていただいて感謝しています。ホールも、コンクールの時よりも響いていたような印象でした。仙台フィル事務局の方にも伝えましたが、次は是非シューマンのコンチェルトを共演したいです。

仙台の名所は廻られましたか?

行けていないんです。できたら延泊して秋保温泉に行こうかと思っていたのですが、今日中に帰らなくてはいけなくなってしまったので……。ただ昨年は松島には行きました。仙台には以前から思い入れが強いんですよ。というのも、このコンクールだけでなく、仙台市で行っている企画には興味がありましたが、なかなか仙台で演奏する機会がなく、縁がないのかなと寂しく感じていたのですが、前回のコンクールでファイナルまで進めて、「せんくら」、仙台フィル定期演奏会と続けて呼んでもらえるようになったので嬉しいです。街には緑も多く、美味しい食べ物もありますしね。

ロン=ティボーをはじめ、いくつかの国際コンクールを体験されていますが、2016年の第6回仙台コンクールはどのように捉えてらっしゃいますか?

多分皆さん同じことを仰られると思いますが、まず他のどのコンクールでもコンチェルトをこんなにたくさん演奏する機会はありません(笑)。それと、審査期間が長いので、出場者がホストファミリーをはじめ、仙台の皆さんと親しく交流できるのはとてもいいことだと思います。とにかくここは人が優しく、アットホームな雰囲気ですね。

そもそも青木さんは“コンクール”というもの自体をどのようにお考えになられますか?

単純に好き嫌いで言えば、好きではありません。入賞して名前が出ればいい、みたいにも決して考えていません。けれども、短期間で集中して練習し、たくさんの曲を仕上げていくことは上達につながると思います。コンクール向きの演奏をしつつ、その中で自分に何ができる考えること。一番大切なことは、そういうプロセスであり、終わった後にどのような音楽的成長を得られるかだと思います。

メリットのひとつには、切磋琢磨しあう同世代のアーティスト同士が出会える場所というのもあるのではないでしょうか。うまくすればそこから新しい刺激やインスピレイション、さらには将来のコラボなども生まれてくるかもしれない。

それは確かに大きいです。仙台はせっかくヴァイオリンとピアノ部門があるので、各部門内で留まらず、両部門の入賞者同士の共演機会もあればよいですね。

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青木さんのMentorというとやはり堀先生ですか?

はい、私を引っ張って育ててくださった一番大きい存在は堀先生です。お人柄はもとより、音楽に対する誠実さ、あらゆるテクニックへのこだわりなど尊敬しています。それに藤川真弓先生、アナ・チュマチェンコ先生のお二人。堀米先生もたまにバシーっと言ってくれますよ(笑)。

英国へ留学されていましたが、どうして選ばれたのですか?

当初はチュマチェンコ先生に師事したいと考えていたのですが、タイミングが合いませんでした。
やむなくどこか別のところで勉強しようかいろいろ考えていたところ、イギリスに住んでいたチェロ奏者の友人が、もしうまく決められないのだったら1度イギリスに来てみなよと誘ってくれたんです。最初のバチェラー(大学)時代は学外の藤川真弓先生に3年間ほどプライベートで習い、その後マスター(大学院)で藤川先生のいる王立音楽アカデミーに移りました。

現在は?

大学院を卒業して2017年末に帰国しました。そして、今年の10月からミュンヘン音大に留学する予定です。

第1回のスヴェトリン・ルセフや第2回のヤンケ兄妹のように第1級のソリストとコンサートマスターを兼ねるヴァイオリニストも増えています。青木さんもご自分の将来のヴィジョンの中に、兼務を考えることもありますか?

ぜひ挑戦したいです。ソリストは自由ではありますが孤独ですし。みんなと一緒に楽しくアンサンブルするのが好きな性格なので、どちらかというと、コンマス向きなのかなと思ったりもしますね。

来年の第7回仙台コンクールでは、セミファイナルでコンサートマスターの席で弾くという課題もあります。次回の仙台コンクールを受けようと考えている方へ何かアドヴァイスでも。

それはおこがましいです。敢えていうならば、通常はこれほど多くのコンチェルトを一度に練習する機会もなければ、演奏する機会もないので、とても勉強になると思います。
それと、大切なのは体力のペース配分だと思います。精神的なものと肉体的なものがうまくマッチしないと、どうしても難しいです。また、ああ絶対無理!とか大変!などと最初から思ってしまうと、実際にそうなってしまうので、どんな状況においてもとにかく間違えても何でもいいから弾き続ける、というシミュレーションはやっておいた方がいいです。
あとは、仙台フィルの皆さんも優しいので、コンクールの場を楽しんでくださいというところでしょうか。そうは言っても、なかなか簡単なことじゃありませんけどね(笑)。楽しむまでにも相当な練習も必要だし。ただ絶対に失敗を恐れてはダメだと思いました。

春にはCDが出るそうですね。

そうなんです。東京の白寿ホールで昨年10月に行ったリサイタルのライヴ録音で、昨年の「せんくら」でも演奏したR.シュトラウスのソナタと《バラの騎士》からワルツ、クライスラーの《愛の喜び》《プレリュードとアレグロ》《ウィーン風小行進曲》を収録しています。今回の仙台フィルとのアンコールで演奏した《美しきロスマリン》もピアノ伴奏版で入っています。これが正式なデビュー・アルバムになります。

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