Sendai International Music Competition

第9回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門 堀米 ゆず子 審査委員長インタビュー | 仙台国際音楽コンクール公式サイト

インタビュー

第9回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門
堀米 ゆず子 審査委員長インタビュー

音楽評論家:萩谷 由喜子

インタビュー日:2025年6月8日

-今回の出場者は全体としていかがだったでしょうか。

 中国からの16~17歳の若い出場者が多いのに驚きました。皆、自由な発想でのびのび弾いてくれました。技術レベルも高くて、旧ソヴィエトの教育システムが中国に来ているのかと思ったほどです。旧ソヴィエトの音楽教育では一日12時間くらい練習するのが当たり前なのです。

-今回は第1位が選出されませんでした。どのような理由でそうなったのでしょうか。

 ヴィルトゥオーゾの協奏曲がよければ、モーツァルトがそうではないというのが全般的な傾向でした。それと、ファイナルでは日替わりでヴィルトゥオーゾとモーツァルトを弾くわけですが、一曲を弾いた次の日にもう一曲に切り替えなければいけないので、音の切り替えが難しかったようです。実際に順位付けをするときは11名の審査委員でまず、第1位を出すか出さないか投票を行いました。すると、出さないほうの意見が多数であったため、第1位なしとすることになりました。次に第2位も同じように出すか出さないかの投票を行いました。その結果、出しましょうということになり、投票で過半数を獲得したムン・ボハさんが第2位に決まりました。第3位も同じやり方で、出すか出さないか、出すなら誰か、というように順に決めていきました。審査委員自身の生徒が残っている場合は、投票を辞退し、それ以外の審査委員で投票するのがルールです。

―ヴィルトゥオーゾの協奏曲とモーツァルトが揃ってよい人がいなかったのですね。モーツァルトの難しさとはどのようなものなのでしょうか?

 他の協奏曲もそうですが、モーツァルトの協奏曲では特に、自分のソロの部分だけでなく、オーケストラがそこでどんな動きをしているのか、という点に注意を払うことが求められます。モーツァルトが書いた少ない音符の行間を埋めていかなければならないところに難しさがあります。モーツァルトは落とし穴に満ちています。それは、一度落ちてみて初めてわかる性質の落とし穴です。でも、それに気づいてわかってきた人はうまくなっていけるでしょう。

-ファイナリスト6人について、講評をいただけますか。

 最高位のムン・ボハさんは自由選択曲の『スコットランド幻想曲』が彼女の持ち味によく適っていて、自分を表現できていましたが、モーツァルトK207には勉強して欲しいところが多々ありました。
 第3位のジャン・アオジュさんの場合、モーツァルトK219は音が突然小さくなる箇所がありました。また、音に表情がなく、長調なのか短調なのか分からない音も出していました。でも、チャイコフスキーはほとんど完璧だったのです。
 第4位のリ・ジンジュさんは、予選からモーツァルトがよかったのですが、ファイナルのシベリウスはカデンツァを一部、飛ばすミスがあり、第2楽章はもっとカンタービレで歌うべきでした。
 第5位のパク・ソヒョンさんはストラヴィンスキーの協奏曲を選んでよく弾きましたが、あの曲は金管楽器が多く使われているので、ソロの音がオーケストラに埋もれてしまう危険性をはらみます。だから審査委員は少し前の方に坐って聴くようにしましたが、それでもやや聴こえにくかったですね。
 第6位のキム・ハラムさんは、予選のイザイの5番、セミファイナルのドヴォルザークは良く弾いていましたが、ファイナルのモーツァルトK219は全体的に音程が上ずっていました。ヴィブラートのせいかもしれません。
 同じ第6位のレイ・ハイルイさんはK207を選びましたが、あの曲はとても難しいので勉強が必要でしょう。

-最後に、若い出場者の皆さんにメッセージをお願いいたします。

 わたしは同じヴァイオリニストとして、誰が演奏しているときも、どうか頑張って最後までうまく弾いて欲しい、と念じ続けていました。コンクールはあくまでも道の途中です。これを糧として今後もしっかり勉強してください。

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