Sendai International Music Competition

第30回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール | 仙台国際音楽コンクール公式サイト

コラム&レビュー

第30回:クラシックソムリエが案内する Road to 仙台国際音楽コンクール

クラシックソムリエ:高坂 はる香

 全30回にわたる「Road to 仙台コンクール」も、最終回を迎えました。

 ここまで、クラシック音楽を存分に楽しむための基礎知識、世界におけるコンクールの存在意義や、お気に入りの出場者を見つけるための手がかりをお伝えしてきました。また、仙台国際音楽コンクールがなぜ世界の若い演奏家から高く評価されているのか、課題曲の特徴やコンクールを支える人たちの活動から、その理由についても見てきました。

 課題曲や審査委員、求められる演奏家の傾向はコンクールごとに異なります。今回の連載で、仙台国際音楽コンクールならではの特徴や聴きどころを知っていただけたのではないでしょうか。

 

◇人生の縮図

 

 以前とあるコンクールで一人のピアニストが「コンクールに参加することは、演奏家としての人生の縮図を経験しているようなもの」と語っていました。

 プレッシャーだらけのコンクールという場が人生の縮図だなんて、演奏家の人生はなんて大変なんだ!と思いましたが、実際、困難だけでなく、すてきな出会いや喜びの瞬間があるのもコンクールというもの。考えてみれば、このピアニストの言う通りかもしれません。

 新しい友人や聴衆との出会い。さまざまなキャラクターの演奏家同士が友情をはぐくみ、また同時にライバルとして競い合うということ。高く評価されたときの喜びと、不本意な結果による落胆やくやしさ。今後のキャリアを左右するマネジメントや支援者との出会いもあるでしょう。そして、この先ずっと繰り返してゆくことになる、最高の音楽を生み出すという挑戦……。

 コンクールという数週間の間に、常に高みを目指す演奏家が経験する多くのことが、凝縮して起きているわけですね。

 若者たちは、さまざまな想いとともに全力でそんなコンクールに臨んでいます。せっかくの機会ですから、聴く側も真剣に耳を傾け、同時にさまざまな視点から楽しみを味わってほしい。これまでの記事を、視点を広げるためのヒントとしていただけたら嬉しいです。

 

◇コンクールを通して、すてきな音楽との出会いを!

 

 コンクール鑑賞というのは、クラシック音楽の楽しみ方として、少し特殊なシチュエーションでしょう。どんな演奏家と出会えるのだろうかという期待とともにコンサート会場へ足を運ぶことには、すでに知っている好きな演奏家のチケットを買って出かけていくときとは、また違ったワクワク感があります。

 “人生の縮図”ともいえる時を過ごしながら、強い精神をもって舞台に立つ若者たちの姿を見ることからも、大きな発見と刺激があるかもしれません。

 そしてやはり、新しいスター誕生の瞬間……つまり、演奏家が優勝という一つの“人生の転機”を迎える瞬間を目撃することにも、大きな喜びがあるでしょう。

 そんなコンクール鑑賞の場面でぜひみなさんに実践してほしいのは、この連載の第1回目でもお伝えした通り、“自分だけの審美眼”をもって好きな演奏家を見つけ、末永く応援するということ。その出場者が入賞すればもちろん祝福し、たとえそうならなくても、コンクールが終わった後も注目し続けてほしいと思います。こうした応援は、多様な個性を持つ若い演奏家が音楽界で活躍しつづけることの助けになるはずです。

 

 これから約1ヵ月間にわたって開催される第6回仙台国際音楽コンクール。今年もみなさんにとってすてきな音楽との出会いがありますように! 会場でお会いしましょう。

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