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インタビュー

チェ・ヒョンロクさんインタビュー(第7回ピアノ部門優勝)

音楽ジャーナリスト:正木 裕美

インタビュー日:2020年1月23日

「仙台での優勝のおかげで、演奏の機会が増えました」

2020年1月、仙台フィルハーモニー管弦楽団との共演のために再来仙を果たしたチェ・ヒョンロク。リハーサルの合間に、コンクールでの優勝を経て変わったこと、変わらないこと、そして、これからのことについて、現在の心境を語ってもらいました。

 

改めてコンクールを振り返り、当時や優勝後の気持ちをお聞かせいただけますか?

以前にも国際コンクールに出場することはありましたが、それは自分の実力を試し、経験値を高めるためでした。でも仙台のコンクールでは、年齢的なこともありますが、演奏者として自分の演奏をもっと聴いてもらいたい、名前を知ってもらいたいという意識が強く、より集中して曲の理解を深め、準備をしてきました。ですから自身の演奏が認められて嬉しかったですし、何より優勝したことでたくさんのチャンスを得ることができ、とても感謝しています。

優勝後、仙台フィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェンの協奏曲第2番をはじめ、日本フィルハーモニー交響楽団ともラフマニノフの協奏曲第3番で協演されるなど、日本でも演奏の機会がありましたね。

はい。このほかに、韓国では仙台の第5回コンクールで優勝したソヌ・イェゴンさんのプロジェクトに参加させて頂き、とても有意義な経験になりました。今後は6月と9月に韓国でリサイタルを行い、ドイツのボーフムでも演奏予定です。また8月には韓国のソンナム・フィルハーモニック管弦楽団の定期演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番を弾くことが決まっています。

気持ちの上での変化はありましたか?

コンクール前も後も「音楽を通じて何をしなければいけないのか」「何のために演奏しているのか」を模索していますが、演奏者としてどういう色を出し、アイデンティティをどう表現すれば良いのかは、なんとなく確立できてきたように思います。

演奏者としてのアイデンティティとは?

ピアノで自分の技術を見せるというよりは、純粋で繊細な音を出すことを理想としています。もちろん、曲の雰囲気や性質によってさまざまな音を弾き分けなければなりませんが、音色に対する姿勢は本質的に変わらないと思います。

そういえば、予選で演奏されたドビュッシーは色彩豊かな音色がとても印象的でした。

ドビュッシーをはじめ、モーツァルト、ショパン、シューマン、ラヴェル、そしてべートーヴェン……これらの音楽家は演奏しようと思うと手を差し伸べてくれるような感覚があり、自分の音楽性と合うように感じています。

6月のリサイタルでは、今おっしゃったショパンとラヴェルを演奏されますね。

私自身とてもエモーショナルな部分があるのですが、ショパンの作品にも悲しさや懐かしさ、寂しさなどの感情的な表現が凝縮されているように感じます。こうした感情を自分に投影しながら解釈し、演奏したいと思っています。一方、ラヴェルは一番好きな作曲家で、できれば会ってみたいと思うほどです。彼の作品は非常に完成度が高く、中でも高い完成度を表しているのが今回演奏するこの2つの作品ではないでしょうか。どうやって和音や和声を重ねていったのか、その作曲過程を知りたいですし、さらに理解を深めて豊かな色彩感を表現したいと思っています。

今後、どのような音楽家になりたいと思っていますか?

自分が話したいストーリーを伝えられ、音楽を通じて慰めることができるような音楽家になりたいと思っています。個性はもちろん大事ですが、マリア・ジョアン・ピリスやクリスチャン・ツィメルマンは追求する音楽の方向性に共感でき、憧れを持っています。また自分では先ほど挙げたラヴェルやショパンなどの感性がとても合うように思いますが、自分の色とは違う雰囲気を持つ作曲家の作品にも挑戦したいです。

例えばどんな作曲家の作品に挑戦したいですか?

リストやブラームスでしょうか。特にリストは自分の性格とは少し違うのではないかと感じています。ブラームスは演奏する機会にそれほど恵まれなかったこともありますが、曲が重厚で、自分の音とは合わないと思っていました。でも機会があればこれらの作品にも挑戦して、私なりの解釈で演奏してみたいですね。

 

《このインタビューの抜粋は仙台市民の文化情報誌「季刊まちりょく」vol.38(2020年3月20日発行)に掲載されました》

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