Sendai International Music Competition

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インタビュー

第7回仙台国際音楽コンクール ピアノ部門優勝者
チェ・ヒョンロクさんインタビュー

音楽ライター:高坂 はる香

チェ・ヒョンロク

優勝から一夜明けて、今のご気分は?

 昨夜は一睡もできませんでした。教授や友人たちからお祝いの連絡が来ていましたが、それでも優勝を現実と思えないまま過ごしました。ガラコンサートに参加して、ようやく少しずつ実感が湧いています。

大変なコンクールの毎日を、何を目指すことで乗り越えたのでしょうか。

 結果よりも、どれだけ音楽に集中できるかを明確な目標としました。自分自身との戦いだったと思います。集中して取り組む中で成長することができました。本当は仙台で観光や食べ歩きをしたかったのですが、全く心の余裕がなく、気づいたら、練習し、録音して聴いてはまた練習することを繰り返す毎日でした。

ピアノはどのように始めましたか?

 3歳上の姉が通うピアノ教室についていくうちに、僕も5歳で習うようになりました。ごく普通の街のピアノ教室です。聞くところによると、姉はなかなか楽譜が読めるようにならないのに、僕は楽譜を見るとすぐに弾くことができたため、この子は伸びるだろうから指導したいと先生に言われたそうです。

現在ザルツブルク・モーツァルテウムで師事するギリロフ先生からは、どんなことを学びましたか?

 韓国で勉強していた時間のほうが長く、ギリロフ先生の元で学ぶようになってまだ1年半です。留学して、まず音楽に対する姿勢からして違うものを感じました。ギリロフ先生は、ピアノを演奏するのではなく音楽を演奏しなさい、ピアニストではなく音楽家になることを目指しなさいとおっしゃいました。それ以降、練習にあたって、音楽家として作品にどう向き合うかを意識するようになりました。
 韓国で受けていた指導は、音楽の色を先生が決めて、それを教えてくれる形だったように思います。一方、ヨーロッパで受けている指導は、学生の想いを羽ばたかせるものだと感じます。

先生の言葉を受け、練習への意識が変わったことで、見えたことや変化したことはありますか?

 今はまだ、答えを求める試行錯誤の最中です。先生の指導が意味することを見出すため、戦っています。自分は何のために音楽をやっているのか、何を成し遂げようとしているのかを自問していますね。
 そんな中で思い出すのは、音楽を始めたときのことです。仲間たちを見ていると、良い結果を出そうとコンクールに挑戦し続ける中で、心が疲弊してきている人もたくさんいます。僕自身もだんだんそうなっていって、あれほど好きで音楽を始めたというのに、本来の心が失われているかもしれないと気がつきました。
 自分がなぜ音楽をやりたいと思ったのか、その最初の気持ちを思い出すことで見えるものがあると今は思っています。

ベートーヴェン、モーツァルト、チャイコフスキーという3つの協奏曲の中で、一番よく弾けたと感じるものは?

 “ゼンブナイ!”。終演後、YouTubeで自分の演奏を聴きましたが、どれも出来は良くなかったと思います……。特にベートーヴェンは、最初の演目だったことと、ベートーヴェンへの尊敬とこの神聖な作品を弾くことへの畏れ多さから、とても緊張してしまいました。舞台から降りる時の僕の表情は、きっと良くなかったのではないかと思います。でも、みなさんから良かったと声をかけていただいて、ようやく、自分が表現したいことを出せたかもしれないと思えました。
 モーツァルトは2曲目だったのでそれほど緊張することなく、かわいらしい演奏を目指すことができました。好きな曲だったこともあり、いい気分で本番に臨めました。
 チャイコフスキーは、これほど大規模な曲をオーケストラと演奏するのは初めてでしたから、リハーサルで演奏が始まった瞬間、これから本当にこの曲を演奏するのだと鳥肌が立ちました。実際に弾いてみて、よりダイナミックな表現が求められる難しい曲だということを改めて感じ、もっと勉強しなくてはならないと思いました。

好きなピアニストは誰ですか?

 それぞれに個性があるので、好きなピアニストはたくさんいます。自分の好みもだんだんと変わっていると感じています。でもすぐに思い浮かぶのは、マリア・ジョアン・ピリスと、クリスチャン・ツィメルマンです。

それでは、どんなピアノをいいピアノだと感じますか?

 “ワカラナイ!”。非常に難しい質問です。でも、どんなに悪いピアノでもそれを良いピアノにすることは、演奏者の責任だと思います。

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