Sendai International Music Competition

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インタビュー

第7回仙台国際音楽コンクール ヴァイオリン部門
堀米 ゆず子 審査委員長インタビュー

音楽ライター:片桐 卓也

仙台国際音楽コンクールの特徴は?

予備審査後に選ばれた40人あまりの候補者たちが直面するコンチェルトの数々、バッハ、モーツァルト、20世紀のプロコフィエフにストラヴィンスキー、バルトーク、そしてロマンチックな名曲の数々、それらをほぼ初めてオーケストラと演奏できる!この事が今や世界中に多々ある国際コンクールと違う仙台の大きな特徴です。コンチェルトをソリストとして演奏する事は他の演奏会とは異なります。確固たる200%のテクニックを保持する事、コンチェルトを弾きぬく体力と気力、知識、そしてそれを追求する困難な過程においてある種の「ま、いいか!」のような楽観的性格があることが欠かせません。

6人のファイナリスト、それぞれについての感想をお聞かせください。

第2位となったシャノン・リーさんですが、セミファイナルでのバルトークの協奏曲はとても素晴らしかったと思います。ファイナルでは、特にモーツァルト(K218)の第3楽章が素晴らしかった!あのグラツィオーソは本当に音楽的だと思いました。逆に言うと、他のファイナリストのモーツァルトは今ひとつでした。コンチェルトを人前で弾いて、何か最後に納得させることが彼女のチャイコフスキーはちょっと物足りなかったのです。他の審査委員も彼女には期待していたのですが、安全圏を行ったのか、そこまでには至らなかったという印象です。しかし彼女は上記に書いた条件を持っている人です。これからの活躍が期待できます。 第3位となった友滝真由さんはよくやったと思います。どの曲も丁寧に弾いていて、セミファイナルでのプロコフィエフも良かった。ファイナルでのブラームスは、最初はちょっと疑問符が付く演奏でしたが、第2楽章から良くなって、それが第3楽章まで繋がったので良かったと思います。第4位となった北田千尋さんはメンデルスゾーンが物足りなかったですが、セミファイナルのプロコフィエフ、それから予選のバッハとイザイはとてもよく弾けていました。音の出し方をもっとソリスティックにして行くことがこれからの課題でしょうね。第5位のイリアス・ダビッド・モンカドさんはとても才能があると思いますが、その才能をどう活かして良いのか、まだ分からない感じがしました。これは学生からプロフェッショナルの演奏家に移行する際の課題で、全員に言えることです。チャイコフスキーで肩当てが落ちる、しかも作品の中で一番難しい場面の前で、というアクシデントを乗り越えて演奏を続けたのは素晴らしい。特にその部分はテンポも安定して細部もよく聴こえましたので、肩当て取ってみては?と彼に提案しました。第6位のひとり、荒井里桜さんはファイナリストの中でも若いほうでしたが、どの曲も手堅くまとめていたと思います。もうひとりのコー・ドンフィさんは絶叫型の演奏家でしたね。ちょっと楽器をガリッと鳴らす場面が多過ぎた。ああいう音はプロフェッショナルの演奏家は出してはいけないと思います。勢いはあるのでこれからもっと音を聴いて演奏してほしいと思いました。また予選でもチャーリー・ラヴェル=ジョーンズのバッハ、古澤香理さんのイザイ等名演奏がいくつかありました。これから頑張ってほしいです。

—セミファイナルでコンサートマスターとしての課題を導入した訳ですが、どんな点に注目されていましたか?

注目点は審査委員によって違いました。ロドニー・フレンドさんは「ボディ・ランゲージ」とおっしゃっていましたが、背中でどれだけ音楽を伝えられるかという点に注目していらしたようです。私が一番注目していたのは音です。コンサートマスターが替わることによって、オーケストラのヴァイオリン・セクションの音がこれだけ変わるのだということは発見でした。それとソロだけでなく、オーケストラとの掛け合いになった時に、どれだけ音楽が身体の中に入っているかという点にも注目していました。

—コンサートマスターとしての採点は、どのように結果に反映されたのでしょうか。

それは審査委員からも質問を受けましたが、その評価の比重をどれくらいにするかは、各審査委員にお任せをしました。トータルで考える方もいらしただろうし、パーセンテージで考える方もいらしたと思います。こういうバランスでという指定はしていません。コンサートマスターという役割はヴァイオリニストにとってとても重要なものなので、この課題はこれからもコンクールの中で続けて行きたいと思っています。

—バッハを予選の課題曲としたのは?

バッハの協奏曲はあまり演奏されていないと思うのですが、音楽が奥深いし、ヴァイオリニストとしての色々な要素がよく分かります。ソロ・ソナタのフーガを弾かせるよりも、その人の歌心も分かるし、オーケストラのリズムを自分の中に取り入れることが出来ているかどうかも分かります。

—ファイナルでのモーツァルトはとても難しい課題だと思いましたが。

モーツァルトはどこに持って来ても難しいです。モーツァルトの様々な音楽的な要素、特にオペラ的な部分も意識して、想像力を働かせて演奏して欲しいですね。この仙台のコンクールはブラームスやバルトークといった大きな協奏曲を演奏しなければならないので、それらを中心に練習していて、バッハやモーツァルトの練習に割く時間が無くなってしまうということがあるかもしれません。でも、もっと好奇心を持って取り組んでほしいと思いました。いずれにせよ最初にお話したようにコンチェルトを弾くという経験を通じて彼らの勉強が飛躍的に発展することと思います。期待しています。

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