Sendai International Music Competition

ルゥォ・ジャチンさんインタビュー(第8回ピアノ部門優勝) | 仙台国際音楽コンクール公式サイト

インタビュー

ルゥォ・ジャチンさんインタビュー(第8回ピアノ部門優勝)

音楽評論家:萩谷 由喜子

インタビュー日:2022年6月26日

初めての協奏曲体験は?

 家族に音楽家はいませんが、2~3歳の頃から音楽を聴くと喜んでいたそうです。それをみて、祖母がピアノを買ってあげようと言って楽器店へ僕を連れて行き、ピアノを選んでくれました。祖母もとても音楽が好きで、僕と一緒にピアノを習い始めたくらいです。

初めての協奏曲体験は?

 14歳のときです。ベートーヴェンの第3番でした。

数あるコンクールの中から仙台国際音楽コンクールを選んだ理由は?

 それはもう、オーケストラと3回も共演できるというのが最大の魅力でした。それから日本に興味を持っていたので、実際にこの目で日本を見て、日本文化に触れてみたいと思ったことも理由です。そして実際に仙台へきてみて、皆さんに本当によくしていただき、大変感謝しています。

ファイナルで弾かれたモーツァルトのハ長調K503は後期協奏曲の中では地味な曲ですが、なぜこの曲を?

 この曲は限りなく純粋な美しさに満たされていて、僕の大好きな作品なのです。非常に色彩感が豊かで、調性が変わるたびに色合いが移ろっていくところがたまりません。特に第2楽章が好きです。練習していて気持ちのよい曲ですし、オーケストラと共演する時は声部の聴き分けを楽しく感じました。もちろん、この曲をオーケストラと共演したのは今回が初めてです。

プロコフィエフの第2番の選択理由も教えてください。

 この協奏曲を初めて聴いた11歳か12歳くらいのとき、まるでモンスターのようだと感じ、強い衝撃を受けました。以来ずっと聴いてきて、闘う姿というか、ダークサイドの面にぐんぐん惹かれてきました。5分もあるカデンツァも大好きで、すべてが素晴らしいと思っています。仙台で実際にオーケストラと共演させていただき、オーケストラとの一体感も感じました。ファイナルと入賞者記念ガラコンサートの2回にわたって本番を体験させていただいたことにとても感謝しています。

現在、ダン・タイ・ソン先生に師事されていますが、どんなアドバイスを受けていますか?

 先生の頭には常に音楽のことがお有りで、最高の音楽を聴き手に届けなさい、といつもおっしゃいます。具体的な教えとしては、voicingということを重視され、声部のつくり方をきめ細かく教えていただいています。作品やフレーズごとに、それにあった美しい音色で声部をつくらなければいけないとおっしゃいます。あともう一つ、師事したその瞬間から、ペダリングについても細かく指導を受けました。ペダルは、使い方一つでまったく異なる音楽になる、曲によってはもちろん、ホールによっても変える必要がある、と教えられました。そうした音楽上のことだけではなく、先生は人生についても語ってくださいます。

実際の演奏上では、何を大切にしてどのような勉強をしていますか?

 曲を構築するとき、細部に気を配りつつ、全体像をイメージすることが大事だと思っています。協奏曲の場合はオーケストラが何をしているのか常にわかっていないとだめなので、必ずフルスコアを勉強しています。実際のオーケストラ合わせの段階では、テンポとか、瞬間、瞬間の合わせ方などをどう確認していくか、プランを立てた上で合わせていただき、オーケストラとのコミュニュケーションを大切にします。合わせのあとは、録音を聴いて確認します。

今後、どのようなレパートリーをつくっていきたいですか?

 モーツァルトはもともと、聴くのは好きでした。弾いてみるとトリッキーなところがあって難しいと感じます。アルカンのピアノ曲にも興味がありますし、コンテンポラリーミュージックも弾きたいです。友人とか新人の作品を実際にその人と話をした上で弾くことも取り組んでみたいです。

次に協奏曲を弾くとき、指揮者とオーケストラを世界中から自由に選べるとしたら?

 今回素晴らしいサポートをしてくださった高関健先生指揮の仙台フィルとまたぜひ共演したいと思っています。

 

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